■PSYVARIAR
EPIROGUE ※専門用語及び造語が多いため、同時に用語解説の方もご参照ください。 ─ 宇宙暦 425年 ミュー(μ = Medium Unit *5)の奇襲によって崩壊したガイズ(G.U.I.S. = Galactic Unified Intelligence System *10)は、その全機能を停止させ、再び人類へと牙を剥くことは無かった。しかし、神への反逆とも云えるその行為は、大きな代償として人類へ重く圧し掛かる…。 ─ 宇宙暦 426年 偉大なる指導者亡き今、人類は歩むべき道を完全に見失っていた。 ガイズ復活に向け動き出す者… ミューを称えサイヴァリア(psyvariar *6)の存在を肯定する者… 事の行く末をただ呆然と見つめる者… 神へすがる者…。 各地で起きる大規模な抗争は、戦争への発展を予感させる。 ─ 宇宙暦 432年 しかし、事態は何事もなかったような収束を見せる。 この平和解決の真相は、他ならぬラムダ(λ = lambda *9)による精神干渉によるものであった。ラムダは主要人物に対する精神矯正プログラムを自ら算出し、幾年の歳月を掛け実行したのである。ガイズによる統制の復活は人類の進化を鈍らす云わば足枷であると判断したラムダは、人類の正統進化と人類自らの統制社会の構築への道を選択する。即ち、サイヴァリア社会の構築である。 新しい社会を再構築し、そのシステムを円滑に駆動させるためには、膨大な時間と計り知れない労力を費やすことであろう。しかし今、人類は新たなる時代への第一歩を、間違いなく踏み出したのである…。 ■PSYVARIAR2 PROLOGUE ─ 零暦 113年 著しいサイヴァリア人口の増加により、その社会化が如実に進む中、宗教結社ウォズ(WO.S.E. = the Order Of Spiritual Entropy *12)は、暗躍する「虚妄の意思」(the will to fabricate *13)の存在を感じ取っていた。虚妄の意思により教団崩壊が間近であることを悟ったウォズは、その失われつつある思念を補完すべく、超有機型人工知能(P.S.A.I. = psychical systematic artificial intelligence *8) エータ(η = eta)の開発に着手した。 ─ 零暦 121年 教団は、虚妄の意思にその思念を蟲ばれながらも、無事、エータのプロトタイプを完成させる。そして、自らの存在が失われる前に、その全てをエータに託し、廃棄惑星である地球へと送り込んだ…
─ 零暦 1088年 地球 エータは地球にて心を閉ざし、一千年もの歳月に渡り虚妄の意思から逃れ続ける。 道無き道を行くわけではない… 終わり無き道を行くわけでもない… されど、遠すぎるその道のりは、今、ようやく転機を迎えようとしていた。教団の思念に導かれ、情報の統合及びその集約と自己進化を繰り返していたエータは、ついに偉大なる神の復活を目前とする。 神が欲する物…。それは、その力を完全に解き放つに値する大量のニュートリノである。エータは復活の儀式を全うすべく、ウィークボゾン(weakboson *15)へと視線を向けた。 ─ 同日 ウィークボゾン 赤道上空 サイヴァリア法制定保安局M.E.S.A.(Medium Enactment Security Association *16)に所属するケイ・L・オリードは、ウィークボゾンに向かう異質なエネルギー反応を嗅ぎ付け、同僚の麻霧悠平と共に偵察へと向かっていた。 悠平: 「ケイ、ここには大規模なニュートリノ収集炉(neutrino absorption furnace *14) でもあるのか?」 ケイ: 「ええ、あるわ。D-MAL4… 最高クラスの収集炉よ」 悠平: 「どうりで… ニュートリノ(neutrino *3)の流れがおかしい」 ケイ: 「でも、それは収集炉のせいだけではなさそうね…」 突如、上空を飛ぶ二人の前に、褐色のM.D.S.(Medium Drive Suits *17)が現れる。そして、間髪を入れず悠平に向け無数の霊子弾を放つ…。 その機体は「楓(frog hands)」と呼ばれる旧型M.D.S.の亜種と見られたが、主に土工用として使われるそれとは明らかに違う機敏な動きを見せた。 悠平: (楓だと?!一世紀前の廃機じゃないか! なめんなよっ) 悠平はそれらを巧みに躱し、逆に一撃を浴びせる。 ケイ: 「さすが、悠平」 悠平: 「感心してる場合かよっ。誰なんだよあいつ?!」 ケイ: 「…ただの楓じゃなさそうね」 ケイは楓の機体に刻まれたエンブレムから、それが遥か昔に自らが壊滅に追い込んだはずの宗教結社ウォズのものであることを瞬時に認識した。 ケイ: (まさか?!なぜ…?) ケイは、楓のパイロットと精神コンタクトを試みる… が、その瞬間、ケイの脳に強烈な刺激と激痛が走った。 ケイ: (精神干渉攻撃?! …しかも、半端な力じゃない!?) ケイは即座に精神保護態勢を取り、相手の強引な干渉を真っ向から受け止める。 ケイ: 「悠平!精神保護態勢に移って!早く!!」 悠平: 「おい、今度は精神攻撃かよ?!」 言われるがままに思考保護態勢に移る悠平。しかし、悠平の精神干渉能力ではとても防ぎきれないと判断したケイは、自らの精神保護と同時に悠平の精神保護を援助し強化する。 エータ: (虚妄の意思…!見つけたぞ…) 二人の精神に強制的に入り込む情報の波…。その悠然たる威圧感は、ケイ…即ちラムダの力をも脅かす存在であることを物語っていた。 ケイ: (私は、とんでもない過ちを犯していたのか…) エータ: 「我が名はエータ… 偉大なる神の使徒である… 虚妄の意思よ… 我らが教団の思念は…今 達成されようとしている… おまえが創造する現世は… 間も無く終わりを告げるであろう…」 悠平: 「虚妄の意思? …何の事だよ?」 ケイ: 「…」 エータ: 「せいぜい その若者と共に 悪足掻きするがイイ…」 褐色のM.D.S.は、そう言い残し飛び去った…。 同時に、無数の攻撃機編隊が次々と現れ、二人への攻撃を開始する。 悠平: 「こいつら、何処から沸いて来やがった!?」 ケイ: 「元々この星のものよ。エータの精神干渉によって狂わされているの」 悠平: 「!? パイロットはサイヴァリアなのか?」 ケイ: 「殆どがP.S.A.I.を搭載した無人機だけど… サイヴァリアもいるわ」 悠平: 「… なんてこった…」 ケイは精神干渉によって抵抗を試みるが、もはや彼らの精神は無茶苦茶に破壊され、再度修復のできる状態ではなかった…。 ケイ: 「今は戦うしかない…」 ケイは戦闘を躊躇する悠平から、(精神干渉によって)不安を取り除いてやった。 ケイ: (ごめんね… 悠平… この戦いは、あなたの力が必要なの…) 悠平: 「仕方ねぇ! ケイ!援護頼む!!!」 ケイ: 「ニュートリノ収集炉よ!急ぎましょう!」 そして、二体のM.D.S.は弾雨に晒れた空を疾風の如く駆け抜けて行く…。 神戦が今、開始された… |