『南総里見八犬伝』は、今で言う千葉県の南端、かつてそこが安房の国と呼ばれていた室町時代を舞台に、 その地の領主・里見家を中心に、八犬士の活躍を描いた物語である。
怪異なエピソードから始まり、常人以上の力を持つ八犬士の登場、それぞれのエピソードが展開し、 やがて里見家の力を恐れた関東管領との戦いへと物語が進んでゆく。

今で言う千葉県の南端、かつてそこが安房の国と呼ばれていた室町時代のことである。 その地を攻め滅ぼし征服した里見義実>は、領主・山下定包を処刑し、更に命乞いをするその妻玉梓を一度は許したものの、その言葉を翻し、刑に処した。
一度は助かると思いきや、その命を弄ばれた玉梓は義実に向かって孫の代まで呪いつくす言い放ち、凄まじい怨念を残して死んでいった…。
そして、領主となった里見義実は娘を授かり、時は過ぎていった。

領主である父の軽々しい一言が、伏姫を悲運たらしめた。
戦で功績をあげれば、体に牡丹の花のような形をした痣を八つ持っている犬、八房(やつふさ)に、嫁として我が娘をくれてやろうと言うのだ。
しかし、八房はただの犬ではなかった。不思議な力を持っていたのだ。
果たして、見事に敵を討ち果たし功績をあげた八房であった。
例え、軽口であっても君主の言葉である。形ばかりとはいえ伏姫は八房の嫁となったのだ。



やがて、身に覚えのないまま八房の子を孕む。
領主の娘が犬の子を産む。
これを恥じ、耐えられなくなった伏姫は自害をしてしまう。

何故に、このような悲運を遂げたのか。
八房こそ、かつて伏姫の父・義実が処刑をした玉梓の怨霊が憑いていた犬だったのだ。

腹の子は形のないものであったが、その“気”は伏姫が首にかけていた数珠に宿り、八方へと飛散していった。
飛散した数珠にはそれぞれの玉の中に文字が浮き出ていた。
「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」の八つの文字である。
しかし、その玉の行方は何処へと散ったのか?
それを知る者はいなかった。
せめてもの救いは、伏姫が犬の子を宿していなかったと知り安心のうちに逝ったことであるが、その命が戻ることは叶わない。



更に時は過ぎ、物語はいよいよ犬士たちを中心に動き出す。

四散した玉は、犬の文字を姓に持つ八つの家へと行き着いた。
そこではそれぞれ、体に牡丹の痣をもつ子供が生まれた。
牡丹は霊力を抑えるという言い伝えを持つ花である。

その子供たち−彼らこそが、玉に宿った気が形を為し生まれた姿なのだ。

第一に登場するのは犬塚信乃(いぬづか しの)。
「女の子として育てると無事に育つ」という言い伝えから信乃と名づけられた。孝の玉を持つ。

物語の前半は、彼を主軸に進展し、運命に導かれた八犬士たちは出会いと別れを幾度か繰り返し、 様々なエピソードを経て里見家へと集結する。
そうして、里見家の命運を決める決戦へ向かうのである。
その他の犬士は以下の通り。


犬山道節(いぬやま どうせつ)
一族を滅ぼした関東管領・扇谷定正への復讐に燃える。
火遁の術を使いこなし、名刀・村雨をめぐり、荘助と戦うこととなる。忠の珠を持つ。
犬飼現八(いぬかい げんぱち)
捕り物の名人。
信乃が下総国にある足利成氏の城を訪れた際に戦いになってしまう。信の珠を持つ。
犬田小文吾(いぬた こぶんご)
旅籠屋の息子として育てられたため苗字は無かったが、
もがりの犬太という悪人を蹴り殺し、「犬田小文吾」と名乗ることになった。 悌の珠を持つ。
犬阪毛野(いぬさか けの)
策略によって断絶した家に生まれた妾の子。 信乃同様、女装で育てられていた。
様々な変装をし父の仇を狙う。八犬士一の知恵者。智の珠を持つ。
犬村大角(いぬむら だいかく)
父親の姿に化けた化け猫に虐待され犬村家に身を寄せ、その一人娘の雛衣と結婚する。
しかし、化け猫との因縁が巡り巡って雛衣を失う。礼の珠を持つ。
犬江親兵衛(いぬえ しんべえ)
物語の後半は彼を中心に進む。 左手に玉を握って産まれ、握ったまま開かない状態で育った。
非の打ち所のない人物だが、泳ぎは苦手。仁の珠を持つ。


      

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